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【ACジャパンCM】北野武×砂田アトム「フェイクは、ホンモノみたいな顔をする」|内容とメッセージを考察

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ニュース、SNS、動画配信サービス。私たちの日常は、かつてないほど大量の情報に囲まれています。その一方で、「本当らしく見える嘘」が、驚くほど自然に、静かに入り込んでくる時代にもなりました。写真や映像、音声ですら簡単に加工・生成できる今、フェイクはもはや特別な存在ではなく、誰のすぐ隣にもある“顔をした何か”として存在しています。
そんな現代社会の危うさを、短い言葉と強烈な映像で突きつけてくるのが、ACジャパンのCM「フェイクは、ホンモノみたいな顔をする」です。

このCMでまず視聴者を戸惑わせるのは、登場人物の“違和感”です。そこに映っているのは、誰もが知る映画監督・タレントである北野武さんと、俳優の砂田アトムさん。しかし、その顔や姿は「本人そっくり」でありながら、どこか決定的に違う。実はこの二人、映像上ではAI技術によって生成された“フェイク”の存在として描かれています。声や表情、しぐさまでもが本物に近づけられた映像は、一見すると疑う余地がありません。だからこそ、視聴者は無意識のうちに「本物だ」と受け取ってしまいます。

CMのコピー「フェイクは、ホンモノみたいな顔をする。」は、とても静かで、しかし鋭い言葉です。フェイクは派手に嘘を叫ぶわけではありません。むしろ、安心できる顔、見慣れた表情、信頼できそうな語り口で近づいてくる。その怖さを、このCMは説明や説教ではなく、体感として伝えてきます。
北野武さんという“圧倒的な実在感”を持つ人物がフェイクとして現れることで、「見た目」や「有名人だから」という理由が、どれほど脆い判断基準かを突きつけられるのです。

また、ACジャパンの公共広告らしく、答えを押し付けない構成も印象的です。「フェイクに気をつけよう」と声高に叫ぶのではなく、視聴者自身が映像を見て、違和感に気づき、考える余白が残されています。その余白こそが、このCMの核心と言えるでしょう。
情報を疑うことは、誰かを疑うことではありません。自分自身の目や判断を守る行為なのだと、CMは静かに語りかけてきます。

AIやデジタル技術が進化し続ける今、このCMは単なる注意喚起ではなく、「これからの情報社会をどう生きるか」という問いそのものです。フェイクがホンモノの顔をして現れる時代に、私たちは何を信じ、どう確かめていくのか。その問いを胸に残す、現代的で記憶に残るACジャパンの一本です。

基本情報

  • CM名:フェイクは、ホンモノみたいな顔をする
  • テーマ:進化するデジタル社会をどの様に生きるか考えよう(フェイク情報/メディアリテラシー/情報の見極め)
  • 広告主:ACジャパン
  • 広告会社:ADKマーケティング・ソリューションズ
  • 掲載メディア:テレビ/ラジオ/新聞/雑誌 他
  • 出演(映像上):北野武(フェイク表現)、砂田アトム(本人)※NHK Eテレ「みんなの手話」スキット出演でお馴染み
  • 内容:AI技術によるフェイク映像を用い、「本物らしく見える情報」の危うさを提示する公共広告

※ 尚、この作品では、手話を第一言語とされている方、文字情報の方が馴染みがある方など、様々な聴覚障害者への情報保障として、手話と字幕の両方を入れる取り組みをしているとのことです。ACジャパン公式サイトより